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プロジェクトの中心で嘘を叫ぶ(2)

みんながどうしてこんなにのんびりしてるのかというと、4年がかりのプロジェクトで、この時点では納期まで2年ありました。
当然、それに見合った規模であって、マスタースケジュール上はまったく余裕などないのですが、それでも2年ある、まだ何とかなるという過信があったのだと思います。
しかし、すでに一部の機能では「うまく動かないのは相手側の責任だ」とくすぶり始めてきたらしく、こういう状態のままいくと、時が経過して必ず全体に支障が出て、総動員で対処するような惨事になる可能性があると非常に心配になりました。

さて、何か突破口は無いものか?と、課題を読み込んでいくと、1つの課題に関係する会社の組み合わせは大体同じことが分かってきました。
機能ごとにベンダーを分けていたため、ほぼ、影響しあう機能=影響しあう会社だったのです。
会社の組み合わせで課題をソートしなおしてみると、どっちが一方的に遅い、待たせているということはなくお互い様な状態でした。

(ピコン!)ひらめいた!

 

A社フロア:
先日はどうも。例の情報提供の件ですが、先方でちょっと設計変更の対応で手がついてなかったみたいで。それで、大変申し訳ないのですが、以前もらった内容だとまだ範囲が広すぎて特定できないので、改めて必要な情報の詳しい内容教えてもらえませんか?ということでした。
→えー?なんですかそれ。。(ため息)
ほんと申し訳ないとのことでした。こちらでもフォローしますので、欲しい情報に関するもう少し詳しい内容を私にメールしてもらえませんか?ほんとすみません。
→勘弁してくださいよ。。
お手数かけます、すみません。早急に対応しますので、今日中に・・・メールいただけます?
→・・・わかりました(しぶしぶ)

B社フロア:
ああどうもー。お忙しいところすみません、前にお聞きした課題番号○○の件ですけども。A社のやつ。
→こんどはなんですか?(ちょっとイライラ)

問い合わせ内容の件ですけども、A社さんちょっと試験環境のフォローでバタバタしてて、回答できてなくて本当ごめんなさいとのことでした。
→それで?

こちらでもフォローしますので、改めて詳しい内容を今日中にメールしてもらうことにしましたのでご確認いただけますか?
お手数おかけしますが、ほんとに申し訳ないとのことでした。
→。。。

回答来ましたら、私の方でもチェックして必要な部分抜粋するのとか手伝いますので、ほんとすみませんが、なんとかお願いします。
→・・・わかったよ

翌日。
A社から昨日23時過ぎにメール着信。約束は守ってくれました。それだけでも万歳です。
早速B社フロアに駆け込みます。

あ、すみません、あさイチにメール転送しました。例の件お願いします。内容的に資料の場所が分かれば私の方でも出来そうなので、格納場所教えて頂ければやっときますが。
→え!? ・・・い、いや、うちでちゃんとやっとくので(汗

翌日無事に情報提供がなされました。
よし、これは行ける!と同じようにC社、D社、E社・・・と組み合わせに応じて調整を図ります。

お気づきかと思いますが、A社へ伝えたB社の話と、B社に伝えたA社の話、完全なる私のでっち上げです。嘘も嘘。(笑)
互いに向こうが先に譲歩したと思い込ませることで本当の最初の一歩を引き出すという作戦が、見事にはまって成功したのです。

もちろん、嘘がバレたら心証が悪くなり、ますますやりにくくなるというリスクはあります。
しかしながらそんなことまで気が回るほど余裕がなく、バレないはずだという確信もありました。
まだ20代の怖いもの知らずの私は、その信念で突き進んだのです。

最初の作戦が成功したことで、①相手が先に譲歩してくれた(折れた)という満足感と罪悪感、②それをお膳立てしたという私に対する借りを作りました。
しかし、実際にこの2枚のカードを持っているのは私です。

1つうまく行けば続けて行ったり来たりできるようになり、時には一方に貸しを貯めておいて大きな課題の対処を引き受けてもらうなんてこともできるようになりました。

私はありもしない相手の謝罪とお願いをでっち上げながら、担当が曖昧な課題についてもこのカードを利用して、ここはうちが対応しないとしょうがないという雰囲気を作りあげ、トントンと処置へと動かすことができるようになりました。

なお、このとき初めて気づいたのですが、課題って一つ解決したと思ったら、その先に2つとか3つ待ち構えていることがあるんですね!(爆)
数が全然減らないよ!3歩進んで5歩下がる~♪

そんなこんなで、毎朝私のパソコンのディスプレイには、その日に対応するべき課題をメモったポストイットがライオンのたてがみの様にぐるりと貼られ、それが無くなると退社するという日々が続きました。

ところで、本来の仕事である進捗管理などの事業統括業務はというと、課題の処置が進んでいくことで、いままで見過ごされていた深刻な問題が炙り出されてきたのです。
(つづく)

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