むか~し むかしのことじゃった。
A社長はバリバリの営業出身。独立後もプレイングマネージャーとして、経営者としてだけではなく自らも営業に出ていきます。
創業以来、右肩上がりの業績で徐々に社員も増えていきましたが、近年は頼りない社員ばかりで、いちいち指示しないと動けないというのが悩みの種。
業績の伸び率も低下で頭打ち傾向なことから、A社長も社員への指示に熱が入ります。自分の仕事と社員の管理でA社長は激務が続いており、最後に休んだのはいつだったっか思い出せません。
そんなある日、A社長が遂に倒れ、救急車で運ばれる事態となりました。
病院のベッドの上で点滴に繋がれたA社長は、
「俺がいないと会社の業績はがた落ちだろうな・・・最悪潰れることも覚悟しなければいけない。」
と思いながら、お見舞いに来た社員に当面のことを指示して、しばらく入院することとなりました。
入院中は週に一度、社員が状況を報告しに来てくれます。それに合わせてA社長も指示を出します。
最初の1カ月ほどは業績も低迷。
「ほら、やっぱりな。俺がいないともうこれだ。」
と、肩を落とします。A社長は、このまま倒産しちゃうんだろうかと不安になりながらも、思うように動かない身体で今できることはない、もう諦め半分で指示を出すのを止め、社員に任せることにしました。
それ以来、社員は報告だけして帰るようになったのですが、2ヶ月経過する頃には業績が回復し始めます。
嘘をついているんじゃないか?とA社長は心配になります。よっぽど業績が悪いので隠してるのではないか?
3ヶ月もすると業績はかなり回復しています。
4ヶ月には元の業績に戻りました。
A社長は一人病室で疑心暗鬼に陥ります。
いつ、実は倒産しますと言いに来られるのか気が気でない日々が続きます。
6ヶ月、やっとA社長が退院できることになりました。
入院中の最後の報告では、なんと業績もかなり良くなっていました。
・・・そんなはずはないんだが。
復帰したA社長は不在だった半年間で一体何が起こったのかをすぐに調べました。本当は酷いことになっているのではないかと。
ところが、帳簿、入出金記録、売上伝票のチェック、取引先へ復帰のあいさつ回りしながらヒアリング・・・すべてが問題はなく、社員が報告してくれたおりに業績がしっかり伸びていたのです。
社内を見渡すと、自分が指示しないと動けなかったはずの社員たちも、心なしか生き生きと仕事しているようにも見えます。
俺がいない方が業績が伸びたということは、社員の自主性を損ね、業績の伸びを頭打ちさせてたのは、俺自身だったのか。
以来、A社長は社員に仕事を任せるようになり、業績も大きく伸びたそうです。
めでたしめでたし。